遠い遠い昔の、懐かしい夢を見た。

この街に来るまでずっと忘れていた頃の夢。

もちろん、完全に忘れていたわけじゃなくて、例えば昔の話をするときなんかに少し思い出すことくらいはあったけれど、日々に紛れて少しずつ遠くなっていった、今よりずっと小さな私。

 

最初の出会いは、偶然。

 

引っ越してきたばかりの私は、なかなか友達が作れなくて、その日も一人ぼっちだった。

ちょっと人見知りで、皆が親切にしてくれても馴染めなくて―――それで、遊ぶ場所を探してあちこち歩き回っていた、その途中だったような気がする。

何気なく入り込んだ森の中、すごく神秘的なイメージが今も鮮明に残っている。

妖精に導かれているような気分で、どんどん進んでいくと、不意に開けた場所に出た。

そこで、お城みたいな建物を見つけた。

「わぁ」

キラキラ光るステンドグラス、王子様と、お姫様。

でもこっちからじゃよく分からない、壁には蔦が張り付いて、瓦屋根の上に掲げられた十字架。

辺りを覆う沢山のクローバーと、その間から顔を覗かせる小さな花々。

甘い風が吹いて、私の髪の毛をそっと揺らしながら抜けていった。

私がぼんやり建物を見上げていたら、いきなり草むらから飛び出してきた、二人の男の子。

「トウッ」

「トウッ―――あれ?」

あんまりお城に見惚れていたものだから、驚いた私が声も出せないでいたら、片方の男の子が気付いた。

「誰?」

もう一人の男の子も振り返る。

強そうな男の子と、優しそうな男の子。

立ち尽くしている私に、二人は興味を持った様子で近付いてきた。

「ねえ、何してるの?」

「誰だ、お前」

片方の男の子の乱暴な言葉遣いに、ちょっとビクッとした私を見て、もう一人の男の子が「ダメだよ、コウ」とその子を突っつく。

「なんだよ」

拗ねたような顔をした男の子から、優しそうな男の子がこっちを振り返って傍に来た。

「ねえ君、名前は?」

わたしは―――

「そう」

優しい微笑が、柔らかな声で、そっと片手を差し出してくる。

「一緒に遊ぼう、俺はルカ、こっちはコウだよ」

離れた場所で強そうな男の子は鼻の下をこすっていた。

 

ルカくん、コウくん。

 

(何で忘れてたのかな、毎日すごく楽しかったのに)

私一人、離れてしまって、いつの間にか二人と遊んだ日々は思い出になっていた。

それなのに、今朝の夢。

どうして急に思い出したりしたんだろう。

昨日、偶然迷い込んだ林の奥、何だか懐かしいような教会の傍で出会った、金色の髪をした男の子。

やっぱり、あの人は、もしかしたら。

 

窓の外はよく晴れた青空。

春の風がカーテンをユラユラと揺らしている。

二人と初めて会った日の様な、仄かに甘くて、柔らかな風。

「また、会えるのかな」

心のどこかで、小さな鍵が、音を立てて開かれたような気がした。

おろし立ての制服に袖を通して、胸元でタイを結びながら、不思議な予感が胸に満ちていた。

 

もどる